
パターのリペアを依頼されました。これはT・P・MILLSのパターですね。現オーナーは中古で購入されたようですが、お気に入りなので仕立て直して欲しいとのことです。このパターはT・P・MILLSでも息子さんの方の作品だとおもいます。お父さんは既にお亡くなりになっているし、作風が違うのでこれは息子さんの作だと思います。結構錆びてますね。まずは作業に掛かる前にパターの数値をチェック。現オーナーが転がりが悪いと伝えてきていたのと、私が構えて見るとフェースが変にかぶって見えてなおかつトゥ側が開いてソールが落ち着かないのでロフトとライ角をチェック、ロフト2゜でライ角は73゜でした。レングスは33.75インチ、総重量524gでシャフトを抜いてみるとチップ側に15gの鉛が入っててヘッド重量は342gでした。バランスはD5だったのでヘッド重量は355g位かなと思ってたのですが見た目がスリムな感じのパターだったので何か計算の合わないパターだなと思ってたのですがバラストで調整してあったので疑問は解けました。鉛などのバラストでバランスを重くするのはよくあることです。ヘッドの重量だけでバランスを重くしようとするとヘッドがボテッとしてしまって、デザイン的に見て太くしたくない箇所に肉厚を載せていかなくてはならないこともありますので、この場合はシャフトのチップ側にバラストを仕込んで数字的な重さを持たせるのは一つのやり方であると思います。現オーナーが軽いような気がするとの事でしたので再度組み付けるときはタングステンカーバイトを使用してもう少しバランスを重くします。


ではヘッドのリビルドに入ります。まずロフトとライ角を4゜と71゜へ修正。特にロフトの2゜とかは通常ミルズなどアメリカのパターでは少ないと思いました。よく見ると不自然にネックが倒れていたので元のオーナーが弄ったのかなと思います。チョイチョイと矯正してシャフトを突っ込んで構えてみてチェック、違和感はなくなったと思います。
見た目に気になる箇所もあってこれはミルズ側と私のパターに対する考え方と、たぶんヘッドを削る際、ミルズでは機械のオペレーターが私ほど細かい事に拘らないのか、私が細かすぎるのかわ分かりませんが画像の部分を現オーナーが了承してくれたので削って修正します。トップブレードも見つめていると少し歪みがあるのでチェックしたところ手研磨のせいでトゥ側へダレてしまって太さが違って見えます。しかもネックの付け根から先端にかけて出たり入ったりしているのでよく見るとブレード下フェース側キャビティ側共にハンドスタンプで刻印がしてあります。これでどうやら膨らみが生じてブレードがのたくって見えると思われます。これも見た目がすっきりするように削って調整。

成形を終えてから錆落としの作業に入ります。まずバーナーで全体を炙ります。表面の錆は大気の酸素と化合してできた酸化鉄ですので炎で炙ってやると酸素が燃焼して錆が鉄に戻ります。

その後、黒染め(ガンブルー)と燃焼した錆を洗面器に入れた希塩酸で酸洗いして落とします。塩酸は濃度が濃ければ早く反応して錆が落ちますが濃すぎると酸で表面が焼けて荒れてしまうので水で薄めた塩酸を使用しゆっくりと落としていきます。時間も掛かるので今回はここまで。次回は作業が進んでから順番に掲載していきます。