ライ角調整とシャフト




このパターのお客さんとの打ち合わせの際に別件でお使いのベリリウムカッパーのピンアンサーのライ角調整の依頼をお受けいたしました。もちろん同様の方法でライ角調整は可能です。ただしブロンズのピンアンサーはかなり慎重にやらないとネックを折ることが有ります。ブロンズや砲金のように錫を含む銅合金は脆く折れやすいので加熱の際も温度を上げすぎないようにしなくてはなりません。冷間で曲げるときも細心の注意が必要で脆いのでポキッと行っちゃうことが
多いです。昔、ショップなどからライ角調整しててネックをへし折ってしまったピンアンサーをいくつも修理したことがありますが、溶接はできない金属なので修理の際は銀を用いて蝋付けで修理します。最近はブロンズのピンアンサーがほとんど売られてないのでこういった仕事は無くなりました。話を戻しますがベリリウムカッパーのピンアンサーのライ角調整と同時にシャフトもリシャフトしたいとのこと。ピンのシャフトのチップ径は9㎜なので9㎜チップ径のシャフトを使うことにします。9.4㎜のシャフトでもいいよとのことでしたが、なるべくパターを削ったりしたくないので穴径を変えるのは今回は見送ります。もちろん穴を拡大するのは難しくありませんがなるべくオリジナルの状態を変えない方が良いだろうと思ったので、シャフト穴の径を変えるのは最後の手段にしたほうが良いと考えました。ライ角調整で角度の指定が有るのとアッセンブルも受けましたのでこのパターについては指定通りの角度でお渡しできますが、ヘッドのみの販売では時々ライ角が狂っていると言われる場合があります。ヘッドのライ角は狂っていなくてもアッセンブルすると狂ってしまう場合があります。それはなぜか。原因で多いのはシャフトの精度です。シャフトはその製造方法から丸棒から旋盤など工作機械で削りだした物ではありません。ですから100/1㎜単位の精度など出ている訳はなくて、結構曲がっている物です。ひどい物になると平たい板の上で転がすとシャクって転がるような物も有ったりします。しかし、シャフトも買うときに何十本も買ってその中で良い物だけ買って後は返品しますなんてことはできないので、偶然その1本の精度に問題が有った場合、アッセンブルする際にもう一度、再調整すると言うことになります。こういうことが有りますのでヘッドのみの販売の場合はアッセンブルする際にネックを曲げるなどの再調整が必要になる場合が有ります。




画像は旋盤にチップ側を差し込んだ状態でシャフトの振れがどのくらい有るかを見たものですが、ライ角計測器がシャフトを掴む位置くらいの場所でダイヤルゲージが最初0の位置から180゜回転させて反対側だと1.03㎜弱針がマイナスに振れていますね。これはこの数字分だけこの位置では振れていると言うことです。さらにシャフトの中央部くらいの位置では同じ計測方法で2.515㎜偏心が見られます。さらにバット側の画像では心押台の穴と比較して頂くと信じられないくらい偏心していますね。このシャフトは某外国メーカーの物ですが、この様にシャフトって結構反りが有る物なのです。ご自分でアッセンブルするときはこういったことも頭に入れてアッセンブルしないとパターのライ角は狂いますし、構えても被ったり開いたりしてしまいます。シャフトについてはもう一つ注意しないといけないことが有ります。それは径の誤差です。当社のパターは穴径は検査していますので9.4㎜だったら0-0、+0.012のH7交差で開けています。ノギスでは計ったら0.2㎜くらいは小さく計測されます。時々、インナー、オーバーのどちらでも入らないと言われる人がいます。穴径が違ってると早合点してはいけません。その場合はたいてい先端にメッキが厚く乗っていて径が狂っていることが多いのです。外径の場合は某国産シャフトメーカーも誤差は0.1㎜くらい有りますと言っていますので9.4㎜の規格のシャフトでも9.5㎜オーバーしていることも珍しくはありません。この場合は先端をベルトサンダーなどで研磨して細くします。内径の場合は私はカウンターシンクと言う面取り工具でメッキのバリを除去していますが、無い場合はハンドリーマで内径を整えて差し込みます。入らないからと言って穴をドリルで拡大したり、ソケットを削るのは最後の手段にしましょう。ドリルの刃で穴を拡大しょうとすると同じ9.4㎜の直径のドリルの刃を使ったとしてもドリルの刃はエンドミルと違って外刃では寸法は出ませんので、たいてい振れて大きくなってしまいます。穴の拡大には精度の良い工作機械を用いることができない場合はハンドリーマで穴を仕上げましょう。ソケットの場合、シャフトが被らない場合はシャフトの被る箇所をベルトサンダーなどで研磨して
細くして被せますが、これもあまり一度にたくさん削らずに回しながら少しずつシャフトに合わせながら仕上げなくてはガタガタになってしまいますので注意が必要です。できない場合は無理せずにお申しつけください。
パター1本であれば、曲がりを把握し、利用すれば自分の好みのアングルに装着できますが、アイアンになると苦労します。